ロサレス物語5部作の一つ。前作『仮面の群れ』で上流階級からつま弾きされたような形で自殺したアントニオ・サムソンの忘れ形見、ペペ・サムソンが主人公です。舞台は1970年から72年頃、反マルコス学生運動が空前の高まりを見せていたマニラ。三流大学に入学したぺぺが、友情、恋、暴力、運動とさまざまな体験を重ねるうちに、悩み、傷つきながら成長していきます。そして、この時代の最後に行き着くところは「政治」です。青春を政治、そして革命に賭けざるを得ないのです。
ショニール・ホセが円熟しきったストーリー・テラーの腕の冴えを見せます。
フィリピンの学生たちの風俗がまぶしいくらい鮮烈に描かれた、非常に面白い作品です。