現代ラオスの政治と経済1975〜2006

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著=カム・ヴォーラペット
訳=藤村和広/石川真唯子
定価4000円+税
A5判上製・324ページ
ISBN978-4-8396-0233-8


 1975年の革命以降のラオスの政治・経済について包括的に書かれた本はまったくありません。本書の原著(フランス語)は2007年にパリで出版され、ラオス本国でも発売されて注目を浴びました。豊富な資料をもとに現代ラオスの政治と経済の流れをバランスよく解説してあり、これからのラオスについての展望と予測も参考になります。

【著者はこんな人】

カム・ヴォーラペット
1948年南ラオスのパークセー生まれ。現在パリ在住。東南アジアや中国の経済について数多くの著作を書くとともに、経済の第一線でも活躍している。1985~98年、シュナイダー・エレクトロニック社で中国・東アジア担当役員、1999年からはフランスのビジネスコンサルタント会社ストラトーグの共同経営者となっている。


【訳者はこんな人】
藤村 和広(ふじむら かずひろ)
東京都生まれ。
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
外務省にて、外務大臣官房、アジア局、中南米局等、また、ラオス、フィリピン、米国、メキシコ等の日本国大使館に勤務。
2009年4月より、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学科特別招聘教授。

石川 真唯子(いしかわ まいこ)
兵庫県生まれ。
上智大学外国語学部フランス語学科卒業後、ニューカレドニア大学法学部に留学。
外務省にて、国際協力局国別開発協力第一課に勤務。
ラオス国立大学、ラオス国立政治行政学院での研修を経て、2009年7月より在ラオス日本国大使館勤務。



【目次】

序文    クリスチャン・テラー
はじめに

第1章 ネーオ・ラーオ・ハックサートによる都市部における政治権力の掌握の段階(1973年〜1975年)
1. 第3次国民連合暫定政権発足前夜の「解放」地区におけるパテート・ラーオの成果
@ 最終的な勝利の前の現場の状況
A 党および行政機構
B 「解放」地区での経済、社会、文化
2.戦争と平和の新しい状況
@ 1962年ジュネーブ協定とその蹉跌
A 中立派の凋落
B 「秘密戦争」の激化
3.ベトナム戦争終結のラオスに対する影響
@ 1973年2月21日のビエンチャン停戦合意とその実施
A 社会の危機とビエンチャン右派体制の分解
B パテート・ラーオの勝利への静かな歩み

第2章 マルクス主義の勝利と初期の幻想(1975年〜1979年)
1.ラオス人民民主共和国の成立
@ 初期段階における政治機構の革命化
A ラオスにおけるマルクス主義国家の建設
B 破壊すべきシンボル
2.危機におけるモデル
@ 「過去は一掃しよう!」
A 惨憺たる経済状況
B 協同組合方式の展開と集団化の失敗
C 国民の一部の国外脱出と体制に対する失望者

第3章  社会主義的政権運営と経済開放改革との間の容易ならざるバランス(1980年〜1991年)
1. 1980年代の経済面及び政治面での再調整の必要
@ ラオスにおける社会主義的発展の再検討
A 正統的社会主義と改革の間の困難な選択
B 「新経済メカニズム」とその結果
C 激変と最初の改革の成果
2. 第5回全国人民代表者大会と1991年の新憲法
@ 第5回全国人民代表者大会の革新精神
A 国家と政治機構
B ラオス人民革命党

第4章  改革と地域統合の最初の総括(1991年〜2006年)
1. ここ15年間の経済の総括
@ 着実な高成長にもかかわらず不安定な経済状況
A 経済の基礎的条件
2. ラオス経済のそれぞれの部門
@ 農業部門
A 鉱工業、手工業、建設部門
B 製造業部門
C 建設部門
D サービス部門
E 金融・銀行部門
F マイクロ・ファイナンス
G 観光部門
3.不十分な社会指標および人間開発指数 
@ 貧困削減の動向
A 1995年から2000年までの社会指標
B 保健分野における前進
C インフラ分野での成果
4.貿易収支とラオスの対外取引
@ 貿易収支
A 輸出
B 輸入
C 総括
D 外国投資
5.改革の風とラオスの地域統合
@ 第6回全国人民代表者大会(1996年)および第7回全国人民代表者大会(2001年)の改革指針
A 党の新しい幹部および若い党員の登場
B 外国投資および国際協力へのアピール
C 第8回全国人民代表者大会(2006年):継続性の中の変化
D 第8回全国人民代表者大会:政治的開放はない、しかし地域統合は継続
E 政治・経済報告
F 社会主義の教義から何が残るか

第5章  新たな国際的課題
1.インドシナの友党
@ ベトナム社会主義共和国との不変の友好関係
A カンボジアとの戦闘的な連帯関係
2.タイとの関係:波乱に満ちた過去、建設的な現在
@ 両国の歴史的・文化的関係
A 共通の利益
3.同盟国 
@ 旧ソ連および旧ソ連圏の支援
A 新しい戦略的パートナー、中国
4.その他の大国との関係 
@ 米国との必要な関係
A 日本、最も寛大な資金供与・援助国
B フランスと欧州連合(EU)
5.ASEAN、有益な地域統合
@ ラオス、ASEANの連帯感を持った正式加盟国
A 孤立の終焉とラオス経済にとっての新たなはずみ
B 大メコン河流域地域(GMS)の経済統合計画
C GMSによるプロジェクト
D ASEANによるプロジェクト

第6章  政治と経済の展望
1.ラオスの政治的未来は
@ 在外ラオス人
A ラオス国外のラオス人はどこにいるのか
B ラオス人は外国でどのように組織化し暮らしているのか
C ラオス人はラオスにとってどのような未来を期待しているのか
D 反対運動
E 結束や国民和解のために必要な政策は
2.明日に向けた成長の見通しは
@ 計画と「ビジョン2020」
A 目的と優先事項
B 成長と開発
C 政府と「ビジョン2020」計画の実行
D 予算の投入
E 機会と阻害要因
F 水力発電電力の売電
G 商品価値の高い原料
H 観光、確実な伸長
I 国民の低い生活水準と社会指標
J 達成度の低い教育と学校制度
K 貿易と当局と共謀して行なわれる不正取引
L 広く蔓延している汚職
M 国土統一の欠如
N 環境と生物多様性のための新たな闘い
O 国家再建のための在外ラオス人の結束
3.発展の見通しとシナリオ
@ 諸動向の概括
A 未来の様々な不確実要素
B ありうる諸動向
C 主な不確実要素
D 政治・経済状況の展開の分析
E 政治面・経済面での長所と短所
F 想定しうる4つのシナリオ
G これらのシナリオの蓋然性

結論
1954年以降のラオスの主要年表
参照文献
索引
訳者あとがき
【訳者あとがき】より
本書は、1975年のラオスでの社会主義政権成立前夜に始まり、王政から現体制への政体転換、社会主義体制の当初段階における経済集団化政策の推進とその挫折、改革開放路線への転換、それと並行する形でのASEAN加盟等による地域統合へと、2006年までの間のラオス人民民主共和国の道程を政治と経済を中心に詳しく辿っています。その際、カム・ヴォーラペット氏は、数多くの文献や先行研究を踏まえていることはもとより、ラオス本国だけではなく欧米等に在住するラオス人との間で積み重ねた面談に基づき、彼らの生の言葉を紹介しながら、それぞれの時期のラオスとラオス人の模様を生き生きと描き出しています。このように1975年以降のラオスを詳しく活写した試みは、本書が初めてであると思われます。
更に、本書の特色は、単にこれまでのラオスの歴史、経過を振り返るだけではなく、それを受けて、今後のラオスの展望について複数のシナリオを提示した上で、それぞれについて検討を加えて、読者をラオスの未来に関する思索へと誘っている点です。その際、著者は、ベトナムが在外ベトナム人の力を国の発展のために活用してきたように、ラオスもその発展のために在外ラオス人のリソースを活用すべきであると強調します。そして、今後、国の内外でのラオス人の世代交代が進んで、これまで全く行なわれていないラオスの現体制側と在外ラオス人との間の対話が実現し、全ラオス人の結束へとつながっていくことへの期待が示されています。こうした視点は、在外ラオス人である著者ならではのものではないかと思われます。
フランス語の原書は、現在ラオスの書店にも並び、注目を集めています。例えば、ラオスで発行されているフランス語雑誌Le Renovateurの2009年2月23日号は、編集者の推薦書籍として、原書を写真入りで紹介しています。

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