インドネシア少年の抗日・対オランダ独立戦争

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原作 エドナ・キャロライン
原画 トムディアン
訳者 井上治


 A5判・並製・266ページ 定価2500円+税
 ISBN978-4-8396-0306-9 C0022
 装幀=臼井新太郎
             

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 【紀伊国屋電子書籍Kinoppy】 インドネシア少年の抗日・対オランダ独立戦争

 インドネシアの人々はいかにして独立を勝ち取ったのか。インドネシアで人気の歴史コミック5部作の完訳です。独立に対するインドネシアの人々の思いと歴史認識を知るために最適の書。日本の読者のために詳細な解説をつけてあります。



本文より1
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【はじめに】
 これはインドネシアの少年向け歴史コミック『オオワシ部隊』(原題はKomando Rajawali)の日本語版です。インドネシアでは小中学生が主な愛読者ですが、大人とくに軍人にも人気があります。
 描かれているのは1944年から1949年までのインドネシアのジャワ島での出来事です。
 インドネシアにはかつてスリウィジャヤ王国やマジャパヒト王国などいくつもの王国が栄えていました。しかし16世紀以降、ポルトガル、スペイン、イギリスそしてオランダが相次いでこの地の支配に関心を示すようになります。そして1619年にはオランダ東インド会社がバタビア(現在のインドネシアの主都ジャカルタ)をオランダの東洋貿易の拠点に定め、以後、ジャワ島をはじめインドネシアのほぼ全域がオランダ領東インドの名でオランダの植民地に組み込まれていきました。約350年間続いたオランダによるインドネシア支配は1942年3月にようやく終わりを迎えます。とはいえ、これでインドネシアが独立できたわけではありません。1941年12月8日にハワイの真珠湾を攻撃して太平洋戦争に突入した日本が「アジアの解放」を旗印にオランダ領東インドにも進軍し、1942年3月9日にオランダ軍を全面降伏させたのです。こうしてインドネシアは1945年8月15日までの約3年半、日本軍の占領下におかれることになりました。
 このコミックのストーリーは、その日本占領時代から始まります。
 インドネシアの人々は、日本軍による占領をどのような気持ちで受け止めていたのでしょうか。そしてまた、日本軍の占領時代にインドネシアでは実際に何が起きていたのでしょうか。このコミックからインドネシアの人々の気持ちと実際に起きた出来事を知ることができるでしょう。
 ストーリーの後半はインドネシアの対オランダ独立戦争が描かれています。日本の敗戦の2日後つまり1945年8月17日にインドネシアは独立を宣言します。しかしながら旧宗主国のオランダはこれを認めようとせず、再びインドネシアをその支配下に置こうとしました。  インドネシアの人々は、このオランダの再侵略をどのように受け止めたのでしょうか。そしてまた、いかにしてオランダを相手に戦ったのでしょうか。これもこのコミックから知ることができるでしょう。
 もちろん、これはあくまでコミックでありフィクションです。主人公の4人の少年すなわちパンジ、アホン、アリットそしてジャルウォは架空の人物です。しかしながらストーリーの背景となる時と場所、主な登場人物や事件はすべて事実や証言に基づくものです。優れたポップ・カルチャーを表彰するポップコン・アジアでも、『オオワシ部隊』は歴史的背景と検証に基づく2014年の最優秀コミックに選出されました。
 独立期をめぐるインドネシアの人々の思いと歴史認識を理解する上で欠かせぬ作品だと思います。(訳者)


【訳者あとがき】
 本書は、2013年からシリーズものとしてインドネシアで刊行されている少年向け歴史コミック『オオワシ部隊』(原題はKomando Rajawali)の第1巻から第5巻までを1冊にまとめたものである。本書では、各巻を章立てにした。また、原書にはないが、日本の読者のために章ごとのあらすじを各章のはじめに若干書き加えた。
 原作者のエドナ・キャロライン(Edna Caroline)は国防・軍事問題に強いインドネシアの女性ジャーナリストである。作画担当のトムディアン(Thomdean)も風刺画を得意とし、2人は共にインドネシアの大手新聞コンパス(Kompas)紙などで活躍している。
 原書の出版元はインドネシアを代表する総合週刊誌ガトラ(Gatra)の発行で知られるエラ・メディア・インフォルマシ社(PT. Era Media Informasi)である。
 こうした陣容からも明らかなように、本書は単なる娯楽コミックではなく、インドネシアの子供たちに独立史をわかりやすく伝えることを企図して編集された歴史コミックである。もちろん主人公の4人の少年、パンジ、アホン、アリット、そしてジャルウォは架空の人物である。だが、その他の主な登場人物は実在の人物であり、歴史上の事件が起きた時や場所もほぼ正確に描写されている。作画にあたってトムディアンは調査研究チームを編成し、博物館や図書館での資料調査はもとより、ストーリーの舞台となる各都市を回って退役軍人をはじめとする歴史の生き証人からの聞き取りや検証にも取り組んだ。
 こうしたことが評価され、インドネシアで毎年開催されているポップ・カルチャーのイベント、ポップコン・アジア(Popcon Asia)で『オオワシ部隊』は、歴史的背景と検証に基づいたコミック・シリーズ部門における2014年度の最優秀賞を受賞した。
・・・


【目次】
はじめに
地図
オオワシ部隊の主人公たち

第1章 オオワシたち
 第1章を読む前に
 COLUMNガトット・スブロト

第2章 抵抗だ!
 第2章を読む前に
 COLUMNスプリヤディ

第3章 炎のスラバヤ
 第3章を読む前に
 COLUMNスラバヤの英雄

第4章 死の罠
 第4章を読む前に
 COLUMNスディルマン

第5章 最後の闘い
 第5章を読む前に
 COLUMNヘルマン・ヨハネス

訳者あとがき


【著者・訳者はこんな人】
エドナ・キャロライン(Edna Caroline)
本名エドナ・キャロライン・パティシナ(Edna Caroline Pattisina)。インドネシアを代表する日刊紙コンパス(Kompas)を中心に活躍する女性ジャーナリスト。得意分野は国防・軍事問題。1993年に西部ジャワのバンドゥン工科大学(ITB)物理工学科に入学。その後、シンガポールのS.ラジャラトナム国際研究院(RSIS)に留学して戦略研究(strategic studies)を専攻し、そこで研究助手も務めた。

トムディアン(Thomdean)
本名トミー・トムディアン(Tommy Thomdean)。社会風刺を得意とするインドネシアの漫画家。2003年、中部ジャワのガジャマダ大学工学部建築学科を卒業。コンパス紙で風刺画を担当していた頃、エドナ・キャロラインと出会い、2010年に結婚。同年、エドナ・キャロラインと共にインドネシア初のマンガ制作会社ジョーカー・シンジケート(Joker Syndicate)を設立。同社を通じたインドネシアのマンガ家の発掘とネットワーク作りにも取り組んでいる。

井上治(いのうえ・おさむ)
1964年東京生まれ。1992年拓殖大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。現在、拓殖大学教授。政経学部長。【専門】インドネシア地域研究。
【主な著作】 単著:『ペタ関連資料:日本人指導官の意識と行動・森本武志・ジャワ防衛義勇軍』(鳳書房、1995年)、『インドネシア領パプアの苦闘:分離独立運動の背景』(めこん、2013年)。 編著:『ペタ関連資料:カプテン柳川留魂録・ジャワ防衛義勇軍・柳川宗成遺稿集』(鳳書房、1997年)、『日本と東南アジア:さらなる友好関係の構築へ向けて』(鳳書房、2014年)。 共著:岩崎育夫編『新世代の東南アジア~政治・経済・社会の課題と新方向』(成文堂、2007年)。




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