タゴール 10の物語

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ラビンドラナート・タゴール
 訳・解説 大西正幸

 四六判・仮フランス装・360ページ
 定価2000円+税
 ISBN978-4-8396-0339-7 C0097 Y2000E
 装幀 臼井新太郎
 2024年9月12日初版発行
             

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アジアで最初のノーベル文学賞作家タゴールの代表的短篇10篇
ベンガル語からの完訳
タゴールのすごさ、文学の本当の面白さ・深さが詰まっています。

表紙の絵はタゴール本人が書いたものです。
カバー絵 タゴール「肩越しに振り返る女」(1935〜36年頃)


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【著者】
ラビンドラナート・タゴール(ベンガル語:ロビンドロナト・タクル)
インドとバングラデシュの国民詩人。近代ベンガル語の韻文・散文を確立、詩・物語・小説・劇・評論・旅行記・書簡など、あらゆる分野に傑作を残した。両国の国歌を含む数多くの歌曲(ロビンドロ・ションギト)の作詞作曲者、優れた画家としても知られる。
1913年、詩集『ギーターンジャリ』(英語版)によって、ヨーロッパ人以外で最初のノーベル文学賞受賞者となった。岡倉天心・横山大観・荒井寛方等と交流があり、日本にも5度訪れている。 自然の下での全人教育を目指して、彼がシャンティニケトンに設立した学び舎は、現在、国立ビッショ=バロティ大学(タゴール国際大学)に発展している。

【訳・解説】
大西正幸(おおにし まさゆき)
東京大学文学部(英語英米文学科)卒。オーストラリア国立大学にてPhD (言語学)取得。専門は、北東インド・沖縄・ブーゲンビル(パプアニューギニア)の危機言語の記録・記述と、ベンガルの近現代文学・口承文化。
1976~80 年、インド(カルカッタとシャンティニケトン)で、ベンガル語文学・口承文化、インド音楽を学ぶ。その後も、ベンガル語文学の翻訳と口承文化の記録に携わっている。
ベンガル語文学の翻訳は、タゴール『家と世界』(レグルス文庫)、モハッシェタ・デビ『ジャグモーハンの死』(めこん)、タラションコル・ボンドパッダエ『船頭タリニ』(めこん)、タゴール『少年時代』(めこん)など。現在、めこんのHPに、近現代短編小説の翻訳を連載中。

【挿画】
西岡直樹(にしおか なおき)
宇都宮大学農学部卒業後インド西ベンガル州のシャンティニケトン大学、ジャドブプル大学に留学。ベンガル語を学ぶ傍ら村々を巡り、昔話や植物にまつわる話を採話。自筆のイラスト入り著書に『インドの昔話下』(春秋社)、『定本インド花綴り』、『とっておきインド花綴り』(木犀社)、『インドの樹・ベンガルの大地』(講談社文庫)、『インド動物ものがたり』『サラソウジュの木の下で』(平凡社)など、絵本(文)に『サンタルのもりのおおきなき』、『カボチャでゴロゴロ』(福音館書店) などがある。


【目次】
郵便局長
坊っちゃまの帰還 
骸骨 
カーブルの行商人 
処罰 
完結 
夜更けに 
飢えた石 
非望 
宝石(モニ)を失って 

解説 
訳者あとがき


【訳者あとがき】
 タゴールの『自選詩集(詩の集まり)』、『歌詞集(歌の花叢)』、『物語集(物語の束)』は、いずれも細かい活字の千ページ前後の分厚い本だが、ベンガル人の中流家庭では、すぐ手の届くところに置かれていることが多い。私はかねがね、タゴール文学の最高の達成は、詩、歌曲、物語にあると思っているが、この三冊の、ベンガル人家庭での聖書のような存在感は、彼らもそう感じていることを、図らずも証明しているように思う。
 『物語集』は、タゴールの全生涯にわたる、九五篇の作品を収めている。この中でも、私は、タゴールが東ベンガルを中心に生活していた、三〇歳代の作品群が好きだ。タゴール自身もそうだったと思われるし、一般のベンガル人に愛されている作品も、この時期のものが圧倒的に多い。実に多様なテーマが、どれも瑞々しい筆致で書き込まれている。ほんとうはその中から三〇篇ほど選びたいところだが、紙数の関係で一〇篇しか掲載できなかった。
 物語の翻訳とともに、西岡直樹さんに挿絵を描いていただくのが、私の長年の夢だった。西岡さんほど、ベンガルの人と文化を深く理解し愛している人を、私は他に知らない。『インドの樹、ベンガルの大地』(講談社文庫)、『インド花綴り』(木犀社)などに掲載された西岡さんの絵を見ていると、ベンガルの自然・社会の風景が、その土の匂いや鳥の囀りとともに、私の胸に蘇ってくる。本書でこの長年の願いを叶えることができたことが、私には、何よりも嬉しい。

 本書の翻訳、および解説の執筆にあたって参照にした資料は数多いが、煩雑を避けて、直接引用したものを除き、特に記さなかった。ただ、タゴールの伝記的事実についてはプロシャントクマール・パール著『ロビ伝』(二〜五巻)、個々の作品の解釈についてはトポブロト・ゴーシュ著『タゴールの物語の作品構成』に多くを負っていることを、ここに記しておきたい。