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インド
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ペシャーワル急行 クリシャン・チャンダル著・謝 秀麗編 - 人間の心に潜む残虐さ 愛憎、嫉妬、絶望を描く-
パキスタンの国語でインドの数ある公用語のひとつであるウルドゥー語は、音の響きが美しく、ウルドゥー定型詩ガザル(叙情詩)はウルドゥー語使用者以外の人々にも甘美な詩として愛唱され、映画の台詞や歌の歌詞にもウルドゥー語の単語が使用されることも多い。しかし、社会派作家の手にかかるとその美しい響きの言葉は鋭い言葉に変貌する。ここに収められている作品はその様な鋭い言葉によって描かれたものである。表題の「ペシャーワル急行」は印・パ分離時のヒンドゥー・ムスリム両教徒による悲惨な殺りくの現実を難民の乗る急行列車「ペシャーワル急行」を通して克明に描き出したものである。ここでは、家を捨て、村を捨て、国を捨て、安住の地を求めて避難する人々が列車から引きづり出され、掠奪され、殺される悲惨な光景が展開される。そこには、宗教の違いがもたらす憎しみは、ある状況下では信仰をもってしても制御できないものであり、人間の持つ限りない残虐さが描き出されている。ベンガル地方を襲った飢きんを題材にした作品「アンヌ・ダーター」では、おびただしい数の人間が食べるものを求めて大都市へ流入する姿を描く。その飢きんは人工的に作り出されたもので、その飢きんによって、食を求めて歩くおびただしい数の人間は、まるで蟻のようであり、踏み殺されようが、飢え死にしようが、顧みられない人間の死の行進であるという。作者は「これらの人間たちにせめて蟻ぐらいの秩序と統制があればこんな状態にはならなかっただろうに。蟻やねずみでさえこれほど悲惨に死にはしないだろうものを」と突き放しながらも、かと言って「施しでいつ誰の腹が満たされるのか。施しは生を与えはしない。施しはいつも欺瞞を与える」と社会を見透かしている。人間によって人間の尊厳が無視された人間の姿がここでは描かれている。インド社会の現実をテーマにしたこれらの作品のほかに愛をテーマにした作品も短編集には含まれている。自然の美しさと恋愛を扱ったものは、インド映画のシーンをほうふつとさせるものがあるが、何といっても作者の面目躍如たるものは恋愛小説でもストーリーの意外性を駆使して人間の心に潜む愛憎を暴き出し、それを読者に突き付ける作品である。「ピレートゥー」はそんな作品で、読む者をドキリとさせる。 |
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焼跡の主 モーハン・ラーケシュ著・田中 敏雄他訳
世評の高かった映画「ガンジー」などを観ると、独立運動における民衆のヒロイズムが強調され、独立と同時に始まったパキスタンとの分離、人為的な国境の線引きによって引き起こされた巨大な悲劇がまるで見えてこない。 |
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マレナード物語 K・P・プールナ・チャンドラ・テージャスウィ著 井上 恭子訳
世界には三千とも五千ともいう言語があるそうだが、そのうち日本語に訳されているのはほんの一握りにすぎない。 |
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焼身 ジャヤカーンタン著・山下 博司訳 - 「太宰治」海を渡る-
今年の夏、タミル作家・ジャヤカーンタンの小説集「焼身」を翻訳出版した。タミル文学の本邦初訳である。八月に学術調査でインドに滞在した折、マドラスのご自宅を訪ね、訳書を寄贈した。そのとき、氏がシンガポール政府主催の「作家週間'97」に、来賓として招かれていることを知った。氏の講演会やシンポジウムが企画されているという。シンガポール経由で帰国する予定だったので、私もご一緒させて頂くことになった。九月はじめ、われわれはマドラスをたち、インド洋を越えて、森林火災の煙たなびくシンガポール・チャンギ国際空港に降り立った。 |
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デリーの詩人 アニター・デサイ著・高橋 明訳 - 心の内奥掘り下げ印度文学に新境地開く-
インドの作家を論じる場合、日本人には想像しがたいことだが、まず、その作家がどの言語を用いて作品を書いているかが問題となる。そしてそれは、多民族・多言語をかかえるインドそのもの、ひいてはインドの歴史や文化の特徴をも写し出しているといえよう。 |