【書評再録】
◎西日本新聞「ASIAトゥデー」、2004年5月17日掲載

韓国で働く
笹部佳子著

 ソウル在住のフリーアナウンサー、笹部佳子さんが韓国での暮らし方のノウハウや、実際に現地で働く人たちのインタビューなどをまとめた「韓国で働く」を出版した。単身渡韓した自身の経験を基に、ビザの取り方、住まいの探し方など、年々身近になる隣国で生きるための指針や生活情報が詰まっている。
 内容は「旅立つ前に」「日常生活」「住まい」「仕事を探す」などの項目ごとに、笹部さんが現実に困ったことを中心に丁寧にアドバイスが書かれている。例えば薬など「日本から持参した方がよいもの」のリストのほか、生活用品の安い買い方、賃貸住宅の種類と家賃の相場、求人情報の見つけ方―などなど。
 こうした韓国で即役立つ情報が、並載されているソウル在住の17人の日本人のインタビューに表れた韓国生活の楽しさ、苦労、働く中で得た韓国人観あるいは日韓関係への視点などと重なり合う形で、「韓国で働く(暮らす)」ことの意味や全体像が浮かび上がる仕組みだ。
 インタビューに登場する日本人は、自分1人で韓国に来て、現在大きな組織に属していない人を選んだという。テレビディレクター、美容院経営、コピーライター、ロックミュージシャン…。企業駐在員とは異なる、実に多様な職種の日本人が現在韓国で働いていることに驚かされ、2つの国の「近さ」にあらためて気付かされる。
 笹部さん自身、NHKを退職後、福岡でフリーのアナウンサーをしていた2000年、サッカーワールドカップを前に「韓国での成功」を夢見て海を渡った。なけなしの貯金60万円を手に、家賃月60万ウオン(約6万円)の地下室から韓国生活をスタートさせた。語学学校に通う傍ら、日本語教材のナレーター、日本語情報誌ライターなどの仕事を自分の力で見つけ、ここまでやってきた。お金がなく米だけを食べる日々の中で、「体当たりしないと死んでしまう」との思いから必死で頑張ったという。歴史的背景から、日本人ゆえに受ける厳しい視線にも耐えてきた。
 それでも笹部さんは「この国には自分自身の可能性を試す面白さがある」という。役割をあらかじめ決め仕事をする日本とは異なり、すきまだらけだが何でも自分の裁量でやれてします魅力に加えて、一度信頼関係を築いたら心底支えてくれる人たちの存在。「本当に苦労は多いし、あまりお勧めしないけど、なおかつ来てみたいという人たちのためになるなら」。笹部さんが著書に託した、万感こもるメッセージだ。
ソウル支局 藤井通彦

◎HOT CHILIPAPER「book release information」、7月号掲載

韓国で働く
笹部佳子著

 女性起業家、ミュージシャン、大学教授…韓国に暮らし、あらゆる分野で活躍している日本人17人のインタビューを掲載。さらに、ビザの取得法や仕事の探しについて、家探しや運転免許の取得、銀行口座の開き方など、韓国で生活するためのノウハウが詳しく紹介されている。著者は、韓国に魅せられ、留学した元NHKアナウンサー。

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