【書評再録】
◎『DACO 』158号 BOOK REVIEW掲載

間違いだらけのタイ語
中島マリン・吉川由佳著  赤木攻監修

    タイ語学習の壁をよじ登る一冊

 本書は、最近自分のタイ語が伸び悩みだなと感じている人にうってつけの本である。外国語学習を車選びにたとえる大胆な書名。しかし中を開ければそれが決して奇をてらった表現ではないことが分かる。全7章の中に日本人の間違いやすい146の誤用例が正しい表現とともに併記されている。間違いタイ語は×、正しいタイ語は○。Pointでは基礎知識を数行にまとめ、それに続く説明も簡潔で分かりやすい。2色刷りの見やすいレイアウトのせいでタイ文字と発音記号の併記も気にならない。
 品詞活用のないタイ語は系統的に教えにくい言葉で、決定版といえる文法書はまだ世界のどこにもない。コチコチの文法説明がなかなかできないのである。その点、生きたタイ語に長く触れてきた2人の著者が採用した本書のスタンスは単純明快である。つまり「なぜ間違っているのか」という文法解説には目もくれず、「とにかくそうなっている」。
 これって一見無責任に見えて、実は語学学習の基本なのである。実用とは名ばかりの類似書が多い中、「習うより慣れろ」と思い切って使えるタイ語に的を絞った点は大いに買える。ちなみに主な対象は初級タイ語を終えた長期滞在者か。1000語程度のタイ語を知っていないと例文を読みこなすには少しきついかもしれない。
 最後に、監修者の赤木氏は前大阪外国語大学学長でタイ学の専門家。同氏の関連監修書に『タイ語読解力養成講座』がある。

評者・宇戸清治(東京外国語大学教授)

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