【書評再録】

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◎2006年1月20日 西日本新聞「読書館R」 掲載

激動のインドネシアと20匹の猫
小菅伸彦著

猫大捜索inインドネシア

 失踪した飼い猫を捜して山に入って日が暮れ、自分が遭難。という経験を持つ猫好き、小菅伸彦という人の本『激動のインドネシアと20匹の猫』(めこん)。経済企画庁勤務や国際協力機構(JICA)とのかかわりで、"インドネシア国家開発企画アドバイザー"という仕事を2度務めた彼が、駐在時代のインドネシア情勢について・・・というよりも、インドネシアで出会い、ともに暮らした多くの猫たちにまつわる出来事を主に書いた本だ。
 遭難してまで彼が猫を捜したのは、首都ジャカルタから車で8時間の農村だ。現地の人々の多くは、「村の大切なお客の一大事」と、仕事を放り出して捜索に協力。今もインドネシアでは強い影響力を持つという「伝統的、土俗的な呪術者」への相談を勧められたりしながら、約1年半の猫探し。果たして結果は。
 猫捜索の様子を通して分かってくるのは、インドネシアにおけるこの農村の人々は、互いの結びつきを大事にする気風や、貧しい中でも村の集まりや儀式にだけは金をかけるような生活習慣を持っていること。そんな状況に著者は、今後必要な近代化と"古き良き"雰囲気の折り合いを思って、ちょっと切なげだ。

評者:松本サルト(フリーライター)

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