【書評再録】
◎月刊オルタ 2006年5月号掲載

あぶない肉
西沢江美子著

 米国の牛肉禁輸、BSE、鳥インフルエンザ・・・・・・。私たちの食卓を襲う「肉問題」とはいったい何か?戦後の農村で育ち、農業や女性、暮らしなどをテーマにこれまで日本各地を精力的に飛び回ってきた著者は、私たちが直面する食肉の危機について考える。豚肉、牛肉、鶏肉が肉になるまでのプロセスの中には、薬漬けの飼料、食肉汚染連鎖、グローバル市場の中で広がった人畜共通伝染病など、さまざまな問題がある。著者はそのひとつひとつに切り込んでいく。そしてこうした現状への代案として、流通や飼料のあり方の変革、そして有機畜産への道が提示されていることは大きな可能性だと感じる。最終章では実践編として「肉の選び方・食べ方」や「どこで買えばいいのか」などの情報も得られる。
評者:内田聖子

◎月刊クーヨン 2006年5月号掲載

あぶない肉
西沢江美子著

おとうさん、牛丼屋に並んでる場合でしょうか?

 今年2月、フランスでも鳥インフルエンザが確認された。ひいきのレストランにも、フォアグラや野鳥などが入ってこなくなるという。ごくごくたまにのぜいたく品とはいえ、あーあ、である。
 著者がこの本の執筆には苦労したとおっしゃるように、食肉関連の「事件」は次々と発生。その大きな原因はまさに、もうひとつ苦労した理由に挙がる「家畜を飼う、肉をつくる、売る、食べる、それぞれの距離が遠い」ことだろう。「吉野家の牛丼がなくなってしまうと行列ができ、アメリカ牛にBSEが発生したという問題などすっとんでしまう」との著者の嘆息に頷きながら思う。ここに列挙される「危険」を避けるには、安全な食肉を求めるとともに、食生活全体を本気で見直さなくてはならないはず。巻末の「食べ合わせで<毒出し>になるレシピ」は、そのうえで役立てたい。


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