パリ ヴェトナム 漂流のエロス

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猪俣良樹
定価 2000円+税
四六判 / 424頁 / 2000年初版
ISBN4-8396-0138-0 C0030 Y2000E
●書評●

中年、というよりもう初老のフランス帰りのインテリ男が突然ヴェトナムにのめりこんだ!
ヴェトナムには誰一人として知らぬものはないという国民的ドラマ『金雲翹』があります。ベトナム戦争前、このドラマの主人公キェウを唱い演じたら右に出るものがいないという絶世の美女がいたのですが、最近彼女が再び姿を現し、話題になっている……
「もし彼女が舞台から発散する匂いを、私の根っこの部分で共有しているはずのアジアの豊かさと貧しさの中で、自分の身体の中にとりこむことができれば、つまりキェウという存在を自分のエロスで感じることができれば、そうしたことが、少しはこの、前立腺肥大、勃起不全、痛風に悩んでいる野良犬の気分を癒してくれるかもしれない。……」
ということで、著者は「エロス」ならぬ「幻の美女」をさがしに出かけるのですが、なかなか見つからない。
ホーチミン〜ハノイ〜ホーチミンそしてパリ〜ロサンジェルス〜再びホーチミンと旅は続くのですが、この間通訳をしてくれたのが、これまたフランス帰りの絶世のマダム。プルーストやカミュ、ベケットなどがさりげなく出てくる二人の会話が実に楽しいのです。
果たして二人の関係はどうなるのか…。ちょっとあぶなくて、とてもしゃれた道行き。「本好き」のアジア好きにはこたえられない楽しい一冊です。

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