【書評再録】
◎『日中友好新聞 』2007年4月5日付 掲載

シルクロードの光と影
野口信彦著

  一筋縄ではいかない「絹の道」

 本書の著者、野口信彦氏は多忙である。新聞社主催のカルチャー教室でシルクロードの魅力を語り、住まいのある地元でシルクロードクラブを主宰し、私も参加したことのあるシルクロードへの旅行にも講師として同行する。
 そして、執筆活動である。本書で3冊目となるシルクロードシリーズの出版や、日中友好新聞の同名の連載をはじめ、雑誌などにもシルクロード関連の記事を掲載している。著者の日常はシルクロードのために多忙なのである。
 本書は、多民族国家中国が抱える民族問題、急速な経済発展がもたらす環境問題、シルクロード各都市の歴史、宗教、音楽・舞踊にいたるまで、著者が現地で数多くの人びとと接し、自ら体験したことへの思いが語られ、観光だけではないシルクロードの影の部分を知るうえでも貴重な一冊といえる。
 また、著者が足繁く通い撮影した多くの写真は、本当に親密になった者だけに見せる、現地の人たちの普段の生活ぶりと素顔を感じ取ることができる。
 1960年代、20歳代の頃に中国に留学し、文化大革命のため志半ばで留学生活を断念させられた。それでも中国への熱い思いをもち続ける著者が語る「シルクロードは一筋縄ではいかない」という言葉を紹介し、本書を推薦したい。
 「僕は、中国という大地と人びとが第二のふるさとと思っています。『我熱愛中国』なのです。盲従ではありません。愛するがゆえに、誰も批判しようとしない『影』の部分を明らかにして、『良き中国、麗しい中国が、アジアの規範になってほしい』と願っているのです。(評者=荒幡孝司)

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