インドネシアの基礎知識(アジアの基礎知識3)


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 加納啓良

 定価2000円+税
 A5判上製・224ページ・図表写真多数
 ISBN978-4-8396-0301-4 C0330

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 インドネシア研究の第一人者加納啓良氏による「インドネシア入門書」の決定版。一気に読めて、インドネシアについての「必要最小限」の知識が身に付きます。
 すべりだしは→インドネシアは大きい国だ。国土面積は191万平方キロメートルで日本の約5倍、これは世界に現存する196ヵ国(2015年4月現在)のうち、14番目に大きい。だが、そのうち5大陸に国土を持たない島国(43ヵ国、独立国ではないグリーンランドなどを含まず)だけを取り出すと、国土面積で見ても人口で見ても、インドネシアが断然世界一である。…
……


【インドネシアはどんな国か】

2億人を超える大人口

 2015年の時点で人口が1億人を越える国は世界に11あるが、2億5000万人もの人口を抱えるインドネシアはその中でも、中国、インド、アメリカに次ぐ第4の人口大国である。現在、インドネシアの人口は日本のほぼ2倍に達しているが、第2次大戦以前は日本よりも人口が少なかった(表1-5)。インドネシアの人口が日本を抜いたのは、おそらく1950年代の後半だったと考えられる。1950~70年代は、世界中で発展途上国の人口増加率が上昇した「人口爆発」の時期で、インドネシアの年平均人口増加率も高かった。1980年代からインドネシアの人口増加率は徐々に下がり出すが、日本の人口増加率低下はそれよりもさらに著しかったから、両国の人口差は開く一方になった。このような人口動態の違いは、両国の年齢階層別人口ピラミッドの相違にも反映されている。図1-8が示しているように、2014年における日本の年齢別人口構成は40歳前後と60歳台にピークが見られるのに比べて、インドネシアでは10歳台がピークになっている。人口増加率の低下傾向にもかかわらず、インドネシアの人々の平均年齢は日本に比べてまだまだ若いのである。
 インドネシアの人口の地理的分布に見られる目立った特徴は、国土面積に占める比率では7%に満たないジャワ島への圧倒的な人口集中だ。表1-6にジャワとそれ以外の地域(日本では、英語のOuter Islandsの訳語である「外島」という呼び名が定着しているので、ここでもそれに従う)の人口の推移を示した。1930年にオランダの植民地支配下で最初の全国人口センサス調査が行われたとき、総人口の七割近くがジャワに住んでいた。独立後は、外島の人口増加率がジャワを上回っているために両者の人口格差は徐々に縮まっているが、それでも2010年の時点で総人口の6割近くがジャワに集中している。
 2016年初めの時点で、インドネシアには全部で34の州(provinsi)が存在する。州より大きい地方行政区分はないが、統計上の大地域区分として、①スマトラ、② ジャワ、③ バリおよびヌサテンガラ、④カリマンタン、⑤スラウェシ、⑥ マルクおよびパプア、の六地域区分がよく使われている(図1-A)。この区分にしたがって、2010年人口センサスによる人口分布を示したのが表1-7である。ジャワの人口密度は1㎢あたり1000人を超えている。これは表1-2に掲げた世界の13の島々の中でも群を抜いて高い数値だ(2番目に人口が稠密な本州でも、同じ年の1㎢あたり人口密度は452人でジャワの半分以下である)。
これに比べて外島5地域の人口密度は格段に低い。しかし、その中でも1㎢あたり人口密度が100人を超すスマトラ、バリ・ヌサテンガラと、30人に満たないカリマンタン、マルク・パプアのように大きな格差がある。スマトラは日本全土よりも面積が広い大きな島だが、その人口密度は日本の北海道(1㎢あたり65人)よりも高い。実際に現地を旅しても感じることだが、近年熱帯林の伐開が急速に進んだスマトラの森林面積比率は北海道よりずっと低いだろう。スマトラで絶滅危惧種に指定されている虎に遭遇する機会は、北海道の山野でヒグマに出会う、また最近では本州でツキノワグマに出会う機会よりも今や格段に少ないのである。
また、統計上は人口密度が極端に低いマルク・パプアのような地域にも、マルク州の州都があるアンボン島(2010年の人口40.1万人、1㎢あたり569人)、北マルク州の州都があるテルナテ島(同年の人口17.2万人、1㎢あたり1544人)のように、局所的には小さくても人口が密集する島々が点在していることも見落とせない。…

【目次】

1 インドネシアはどんな国か
2 自然と地理
3 歴史
4 政治と行政
5 経済と産業
6 対外関係
7 社会と宗教
8 地域の横顔
9 11人の正副大統領
文献案内・索引

【執筆者はこんな人】

加納啓良(かのう・ひろよし)
東京大学名誉教授。
東京大学経済学部卒業後、10年間アジア経済研究所で中・東部ジャワの現地調査を中心にインドネシア農村経済の研究に従事。その後東京大学東洋文化研究所に転じ、30年以上インドネシアを中心に東南アジアの経済・社会の研究を担当。1993年に立ち上げられた「日本インドネシアNGOネットワーク」(JANNI)の創設にも関わり、現在も運営委員会代表を務めている。1997年から2008年まで東京大学がJICAのプロジェクトとして行なったインドネシア大学日本研究センターへの研究協力にも携わった。
主要著書『インドネシア農村経済論』(勁草書房、1988年)、『現代インドネシア経済史論』(東京大学出版会、2004年)、『インドネシアを囓る』(めこん、2003年)、『インドネシア検定』(監修、めこん、2010年)、『東大講義 東南アジア近現代史』(めこん、2012年)など。





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