インドネシア検定 公式テキスト

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加納 啓良監修
定価2000円+税
A5判並製・240ページ
ISBN978-4-8396-0241-3 C3087

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2011年3月12日全国4ヵ所(東京、大阪、名古屋、福岡)で「インドネシア検定」が行なわれます。本書はその公式テキストです。
まずは小手調べ。いずれも口絵のキャプションの質問です。
★ 古代ジャワの世界最大級の仏教寺院遺跡の名は?
★ パプア南西部に広がる大湿地帯は何と呼ばれますか?
★ 豊かな伝統文化が息づくバリの「芸術の村」とは?
★ ワヤンの物語のもとになっている古代インドの叙事詩の名前は何と何でしょう?
★ インドネシアの国章に描かれる建国の5原則を何と言いますか?
★ 世界一美しい海岸と言われるケイクチール島が属する群島の名前は何でしょう?
★ 巨石文化と舟形家屋で有名なスマトラ沖の島とは?

自分のインドネシア度を確かめながら読むうちに、本物の「インドネシア通」になります。
インドネシア検定問題の80%はこの本から出ます。
【監修】
加納 啓良 【東京大学教授】
【執筆者】
新井 和広 【慶應義塾大学講師】
井上 治 【拓殖大学准教授】
内田 道雄 【写真家】
榎本 直子 【インドネシア料理研究家】
遠藤 尚 【(財) 統計情報研究開発センター研究員】
大川 誠一 【インドネシア文化宮主宰】
押川 典昭 【大東文化大学教授】
風間 純子 【至学館大学准教授】
加納 啓良 【東京大学教授】
工藤 裕子 【東京大学大学院】
國谷 徹 【東京外国語大学共同研究員】
高地 薫 【大東文化大学講師】
小座野 八光 【愛知県立大学准教授】
小松 邦康 【紀行作家(在ジャカルタ)】
重永 文恵 【インドネシア雑貨販売ぶんぶん堂店主】
鈴木 隆史 【アジア漁業経済研究家】
田子内 進 【外務省(在シンガポール)】
中 有希 【ジャワ舞踊家】
西 芳実 【立教大学助教】
西野 節男 【名古屋大学教授】
ポント 一男 【Kaz Studio経営(在ジャカルタ)】
間瀬 朋子 【上智大学大学院)
松井 和久 【JETRO専門家(在ジャカルタ)】
松本 亮 【日本ワヤン協会主宰】
見市 建 【岩手県立大学准教授】
皆川 厚一 【神田外語大学准教授】
村上 尚至 【バリ・ツアーズ社長(在バリ)】
村上 百合 【フリーライター】
門田 修 【海工房主宰】
渡辺 万知子 【染織家】
三牧義明【ASEAN検定事務局】


【監修者はこんな人】
加納啓良(かのう・ひろよし)
東京大学経済学部卒業後、10年間アジア経済研究所でインドネシア農村経済の研究に従事。その間ジョグジャカルタにあるガジャマダ大学に客員研究員として滞在し、中・東部ジャワの農村調査に携わったのが研究遍歴の原点になっている。その後東京大学東洋文化研究所に転じ、30年間インドネシアを中心に東南アジアの経済・社会の研究を担当。途中、国際文化会館社会科学国際フェローとしてオランダとインドネシアに研究留学し、農村経済の調査を続けるとともに、主に19世紀以降のインドネシアの社会経済史の研究も手がけてきた。日本とインドネシアの市民レベルの交流のために1993年に立ち上げられた「日本インドネシアNGOネットワーク」(JANNI)の創設にも関わり、1998年まで同組織の代表、それ以後も現在まで副代表・運営委員として活動を支えてきた。
また、1997年から2008年まで東京大学がJICAのプロジェクトとして行なったインドネシア大学日本研究センターへの研究協力にも中心メンバーのひとりとして関わった。
主な著書に『現代インドネシア経済史論』(東京大学出版会、2004年)、『インドネシアを囓る』(めこん、2003年)、『インドネシア農村経済論』(勁草書房、1988年)などがある。


【内容】
第1章 観光地と遺跡 
ボロブドゥールとプランバナン 古代ジャワの仏教・ヒンドゥー寺院  
東ジャワとバリのヒンドゥー遺跡 10〜15世紀の寺院群 
ディエン高原とブロモ山 インドネシア屈指の絶景  
王宮(クラトン)めぐり 今も息づく伝統文化の中心 
ジャカルタ 植民地時代の面影と中華街の活気 
北スマトラ 高原リゾートからビーチまで何でもあり 
西スマトラ 赤道直下の森に咲く世界最大の花 
スラウェシ 固有種の動植物と珊瑚礁の海 
マルク諸島 香料貿易で栄えた楽園 
コラム 原初風景のつまった島、ニアス 

第2章 バリ島 
宗教 バリ・ヒンドゥーの宇宙 
歴史 楽園の苦悩と栄光 
暦 生命と宇宙の営み 
建築 聖邪共存の空間 
音楽 熱帯の響き 
舞踊 踊る神々の島 
演劇 楽園の劇場 
美術 島民総芸術家! 
デンパサール バリ通にこそオススメ 
海の観光 異なる魅力のビーチ 
ウブド 伝統文化と芸術の村 
寺院と祭礼 神と人と自然の調和 
コラム 等身大の世界 

第3章 自然と地理  
世界最大の群島国家 長大な国土と多様な生物 
気候区分と土地利用 「熱帯夜」の少ない熱帯気候 
人口分布と地方行政 2億3700万人の住みか 
海と船 大洋にはさまれた多島海 
熱帯林と川 河口に立てば森が見える? 
火山 「火の輪」が国土を貫通している 
地震と津波 津波はインドネシア語になった 
マラッカ海峡とリアウ諸島 マングローブの中の海賊 
カリマンタン 世界で3番目に大きな島 
ヌサテンガラ 火山列島に草原が広がる 
パプア 無尽蔵の天然資源 
コラム コモドオオトカゲ 

第4章 民族と言語 
多様性の中の統一 インドネシアの国是 
言語 マレー語からインドネシア語へ 
ジャワ語とジャワ文化 最大種族の共有財産 
華人 差別から融和へ 
アラブ系インドネシア人 力を持ったマイノリティ 
分離独立運動 国家分裂の火種 
民族紛争 「民主化」と重なる 
コラム ジャカルタのブタウィ族

第5章 歴史
原始時代のインドネシア 化石人類の宝庫 
古代史を飾る王国群 東西交易と国家の誕生 
栄光のマジャパヒト王国 ヌサンタラ統一の夢 
進むイスラム化と新興諸王国 インド洋世界との結びつき 
スンダ・クラパからジャヤカルタへ 港町史話 
オランダ東インド会社とバタビア商館 交易独占から領土支配へ 
オランダ領東インドの成立と崩壊 プランテーション経済の形成 
日本軍政と独立戦争 紆余曲折の道筋 
スカルノからスハルトへ 強権政治の展開 
改革(レフォルマシ)の時代 繰り返された政権交代 
コラム 9月30日事件 

第6章 政治と経済 
パンチャシラ 建国5原則 
憲法 独立の象徴 
政党 主要9政党のプロフィル 
総選挙 5年に1度の民主主義の祭典 
歴代の正副大統領 トップリーダーたちの顔ぶれ 
オランダ企業国有化と国営企業 脱植民地期のインドネシア経済 
プリブミ優先の表裏 華人系との微妙な関係 
規制緩和と民間企業の台頭 石油に頼らない経済へ 
経済危機から中進国へ 再建のいばら道を越えて 
コラム スハルト退陣 

第7章 産業と工芸 
コーヒーとゴム 伝統的プランテーション産業  
鉱業とエネルギー資源 今も大事な地下のお宝 
稲作農業と農村 2.4億人の胃袋を支える 
漁業 輸出水産物とその漁法 
バティックとイカット 伝統文化と歴史を写す鏡 
地方分権化と地域振興 時代は中央から地方へ 
林業と違法伐採 消えゆく豊かな森
アブラヤシ 森林火災と土地問題の元凶 
コラム インドネシア中の民芸品が集まるバリ島 

第8章 文化・芸術 
ワヤン 1000年も続く影絵芝居 
ジャワ舞踊 宮廷舞踊と伝統舞踊 
ガムラン音楽 リズムに刻まれた民族の記憶 
クロンチョン 日本・インドネシア史の一面を彩る音楽 
ダンドゥット 絶え間なく変化する大衆音楽 
文学 政治と社会に向き合う  
インドネシアの映画 21世紀の活況 
コラム プラムディヤ・アナンタ・トゥール 

第9章 交通と通信 
バス いつ着くかわからない、いつ出るかわからない 
鉄道と電車、地下鉄計画 遅れたシステム整備と交通渋滞 
ベチャ、オジェック、タクシー いろいろな「庶民の足」 
空の旅 飛行機も今や庶民の足
ワルテル、携帯電話、SMS 移動体による通信革命 
インターネット プロバイダ契約なき普及 
コラム ジャカルタを快走する東京の中古電車 

第10章 食文化 
主食 白米が基本 
大豆加工食品と野菜 手軽なおかず 
香辛料 味の決め手 
一般的なインドネシア料理 定番の日常食 
ジャワ料理とスンダ料理 比較的まろやか 
パダン料理 激辛の宝庫 
スラウェシ料理 多種多様な食材 
バリ料理 豚肉料理が豊富 
果物、お菓子 甘いお楽しみ 
コラム 食事のかたち 

第11章 信仰 
「唯一神」信仰と祝祭日 イスラムの祭日が多い 
イスラムの2大潮流 時代への適応 
礼拝・断食・巡礼 イスラムの基本の基本 
ベールとハラールフード グローバル化への柔軟な対応 
キリスト教 第2マジョリティ 
仏教と儒教 独特の祭典と三教混交 
イスラム過激派と爆弾テロ 世界的な闘争と連携 
コラム プサントレンとマドラサ 

第12章 暮らしと労働 
モノ売り 経済の重要ファクター 
買い物 伝統と近代のはざまで 
学校教育 インドネシア式6-3-3制  
ジャカルタ住宅事情 階層により異なる住宅形式 
タブー 日本人にとってのべからず集 
ジャムー 廉価で健康を買う 
都市への移住とトランスミグラシ 全人口の1割が移住者 
国際出稼ぎ 問題は多いがそれでも出かける 
コラム カキリマの由来 

★インドネシア検定 模擬テスト 
★ 解答 

【まえがき】より
■インドネシアを描く――統一の中の多様性

 第4章の最初の項目で詳しく書かれているように、インドネシアは「多様性の中の統一」を国是とする国で、赤道をまたぎ東西4200kmに及ぶ広大な空間に散らばった1万3000もの島々から成る国土に、300 を越す民族・種族に分かれ、700 以上の地方語を話す2億4000万人の国民を抱えている。そのうちイスラム教徒が9割近くを占めるが、2000万人を越えるキリスト教徒、数百万人のヒンドゥー教徒や仏教徒もいて、宗教的にも多様である。
 ASEAN 諸国の中でも群を抜くこの地理的・文化的多様性こそが、この国の魅力の最大の源泉なのだが、その魅力を余すところなく1冊の書物で紹介することは不可能に近い。どうすれば、本書でこの至難の課題に挑戦できるだろうか。最初の打ち合わせの際、地域別の章立ても考えてみたが、全地域を10章あまり200ページ余のスペースで語り尽くすのはどだい不可能だ。それに多様とはいえ、インドネシアは既に深く根付いた1つの国語インドネシア語で結ばれた統一国家で、全国共通の文化、事象にも事欠かないのである。
 そこで本書では、地域性も加味しつつ、全部で12の分野別に章を立て、更にそれを100 を越す項目に分けて、それぞれに造詣の深い29人の執筆者たちにお願いして重点的な記述を心がけることにした。ただし、日本人観光客の注目度が圧倒的に高いバリ島については特等席をあてがい独立の1章を設けた。インドネシアについてカバーしている分野と主題の広さは、たぶんこの種の入門書、ガイドブックの中でも群を抜いているのではないかと自負する。どの章からどの順序で読んでも構わないが、本書全体を繙いていただくことにより、読者のこの国への知識と理解は格段に広がり深まることだろう。
 とはいえ、重点的な記述を心がけたためにこぼれ落ちてしまった事物もけっして少なくはない。たとえば都市の紹介ではスラバヤやバンドンなどの記述が手薄になったし、音楽についてもポップスや地方歌謡に踏み込めなかった。食べ物についてもソト、ラウォン、アヤム・ゴレン、プチュルなど中・東部ジャワの名物料理に筆が及ばなかった。このようにまだ多くの「穴」が残ったが、本書を読み終えてひとかどの「インドネシア通」になられた読者は、もう自力でこれらの「穴」を埋めていく探求力を身につけられるものと確信する。
加納啓良

 

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