変容するインドネシア

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 小川忠
 

 2023年12月10日初版
 四六判・並製・464ページ
 定価3200円+税
 ISBN978-4-8396-0336-6 C0030 Y3200E
 
             

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 インドネシアが日本を抜くのは時間の問題か…台頭するインドネシアの実力を知らないのは日本人だけだ。20年以上この国を見続けている著者が最新の情報と自らの観察をもとに インドネシアの全体像をリアルに描いた大著。変容するインドネシア理解のカギとなるのは「イスラーム」と「デジタル化」です。


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【著者はこんな人】

小川忠(おがわ ただし)
跡見学園女子大学文学部教授。
1959年神戸市生まれ。
1980~81年米国キャンザス大学留学。1982年早稲田大学教育学部卒、2012年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了。博士(学術)。
1982~2017年国際交流基金に勤務。1989~93年国際交流基金ジャカルタ日本文化センター駐在員、2011~16年国際交流基金東南アジア総局長(在ジャカルタ)。2017年より現職。

《専門》国際交流政策、東南・南アジア研究。

《著書》
『インドネシア 多民族国家の模索』(岩波新書、1993年)
『ヒンドゥー・ナショナリズムの台頭』(NTT出版、2000年。毎日新聞・アジア調査会 アジア・太平洋賞特別賞受賞)
『インド 多様性大国の最新事情』(角川選書、2001年)
『原理主義とは何か:アメリカ、中東から日本まで』(講談社現代新書、2003年)
『テロと救済の原理主義』 (新潮選書、2007年)
『戦後米国の沖縄文化戦略』(岩波書店、2012年)
『インドネシア イスラーム大国の変貌:躍進がもたらす新たな危機』(新潮選書、2016年)
『自分探しするアジアの国々 揺らぐ国民意識をネット動画から見る』(明石書店、2021年)
『逆襲する宗教:パンデミックと原理主義』(講談社選書メチェ、2023年)


【本文より】

 日本は、政治、安全保障、テロ対策、投資・貿易、インフラ整備、環境、防災、高齢化への対応、文化創造等、様々な分野で、インドネシアとパートナーシップを磨いてゆくことで、未来を切り拓いてゆける。そのためには、パートナーについてもっと知り、理解することが求められているのだ。ところが「台頭するインドネシア」「身近になるインドネシア」の現実に、日本社会の一般的なインドネシア認識はついて行けていない。
 少なからぬ経済専門家が、30年先インドネシア経済は世界トップ10に仲間入りしていると予測している。国際コンサルティングのPwCは、2050年インドネシアのGDPは、10.5兆米ドルで中国、インド、米国に次いで世界4位に躍進すると予測する。世界第4位の2億7223万人の人口を擁し(2020年国勢調査)、国民の平均年齢は29歳と若く、消費意欲も旺盛で国内市場は拡大し、経済成長に有利な勤労世代の人口増が続く「人口ボーナス」のある国として、インドネシア経済の実力を評価する。他方、2050年日本のGDPは6.77兆米ドルで、世界ランキングを現在の3位から8位にまで落としている。前述の4ヵ国に加えて新興国ブラジル、ロシア、メキシコにも抜かれるという見立てだ。30年前の絵空事は、30年後には現実のものとなるかも知れない。

【目次】

第1部 インドネシア社会――変化の潮流と多様性
 第1章 インドネシア・イスラームは「非寛容」へ向かうのか
 第2章 インドネシア社会のデジタル化と民主主義

第2部 社会・文化変容から見たインドネシア各地

 第3章 西部ジャワ――アートとデジタル化で変貌を遂げるバンドン
 第4章 中部ジャワ――ジャワ文化本場のイスラーム女性組織に見る多様なジェンダー言説
 第5章 東部ジャワ――イスラーム・エリートを生み出す国際派プサントレンの教育力
 第6章 バリ――グローバル化とジャワのイスラーム化が刺激するバリ文化復興運動
 第7章 アチェ――イスラーム法が施行される唯一の州
 第8章 中部スラウェシ、ポソ――「宗教」紛争の負の遺産をどう乗り越えていくか
 第9章 パプア諸州――パプアが問う国民国家のかたち
 第10章 東ヌサ・トゥンガラ――キリスト教徒多数派の社会
 第11章 スマトラ諸州――「開発」を問う森の人々
 第12章 ジャカルタからヌサンタラへ――壮大な首都移転構想の目指すもの

第3部 コロナ禍後の世界におけるインドネシア

 第13章 イスラームを外交資源とするインドネシア――タリバンへの説得
 第14章 新冷戦が刺激する新・非同盟主義外交
 第15章 深まる中国との関係と華人系インドネシア人
 第16章 近代医学とナショナリズム――インドネシアの原点回帰

あとがき
参考文献
索引