ラオス便り
ラオス在住の島崎一幸(しまざきかずゆき)さんの「ラオス便り」を連載します。
島崎一幸さんは1970年から3年間ビエンチャン郊外タゴンで青年海外協力隊の一員として農業指導に従事しました。その後、ラダワンさんという可愛いラオス女性と結婚して帰国。10年ほど前から再びラオスに戻って、コンサルタント会社を経営しています。農業開発が仕事の中心なので、島崎さんはラオス人もほとんど知らない深い山の奥のずいぶん辺鄙なところにまで入っています。そうした仕事現場での珍しい写真を発表してもらうことになりました。これこそ、誰も伝えたことのない本当のラオスです。なお、島崎さんには「ラオス概説」(ラオス文化研究所編)制作にあたってとてもお世話になり、写真も使わせていただきました。
第17回 ルアンパバーン県とビエンチャン県サイソンブーン郡 の農民参加灌漑プロジェクト 2007年2月
前回の第16回のラオス便りで「農民の参加による灌漑施設の工事」の様子をご紹介しましたが、それらが完成して、「いよいよ水路に水が流れるようになってきた」とのことでしたので、2月7日から10日にかけて、サイニャブリー(サヤブリー)県とルアンパバーン県を車で駆け足で回って視察してきました。
写真1:サイニャブリー県パークライ郡のH. Yang Noiプロジェクトの農民参加による水路工事の様子です。雨季になっていないのでまだ水路には水が来ていません。6〜7月になれば待望の水が流れるはずです。 | 写真2:完成している取水堰。まだ、雨季になっていないので水が貯まっていません。6〜7月になれば堰の上流側(写真の手前側)が小さな貯水池となります。 |
写真3:サイニャブリーへ向かう国道4号線のNam Liap村近くの風景。現在国道4号線はADBの資金によりところどころ舗装工事が進んでいるのですが、全面舗装となるのはまだ時間がかかりそうです。 | 写真4:Nam Liap村の道路脇の市場。地豚をぶつ切りにして、小分けして売っています。地豚を売っている人はここの村人(少数民族)。買う人は我々のプロジェクトの マネージャーのブアワンさんで低地ラオ人。売り買いのやり取りは真剣そのものです。 |
写真5:同じ村の市場で見かけた少数民族の女の子。棚にならんでいるのは山で採れたショウガ、手前はサトウキビです。 | 写真6:ルアンパバーン県ナムパー・プロジェクトの農民参加により完成した水路です。前回(16回)のラオス便りで 完成した取水堰の写真をご紹介しました。この水源(ナムパー川)は流域が広く、年間を通じて水があります。堰から取水された水が山裾を縫って建設された水路 を伝わって生き生きと流れています。このように農民が作った水路に水が流れているのを見ると嬉しくなってしまいます。 |
写真7:同じプロジェクトの農民個人の手作りの水路です。どうしても早く自分の水田に水を引きたいために大急ぎで作った水路です。農民の気持ちが分かる気がします。 |
写真8と9:ルアンパバーンから国道13号線をバンビエンに向かって走った途中の国道沿いの焼畑の風景です。女の子(10歳くらいでしょうか)も農作業の手伝いをしています。 |
写真10: ビエンチャンから150km北、バンビエンは石灰岩の山並みが背後に控え、観光のスポットとなっています。バンビエンの「サンセットレストラン」でビールを飲みながら夕日を見るのは格別です。 | 写真11: ビエンチャンから国道13号線を北へ94km進んだところにあるナムリック川に架かるベイリー橋(1車線です)。次の乾季には日本の援助で橋の架け替え工事をすることが決まっています。 |
第18回 ビエンチャンのピーマイ
4月14日から16日までビエンチャンのピーマイでした。普段はは本堂に安置されている仏像がこの3日間は お寺の境内に出され(金網で囲ってあります)、参拝に来た人々が水で清めます。仏像にかけた水が下に滴り落ちるのを手で掬って自分の頭を濡らします。きっ と今年の息災や健康をお祈りしているのでしょう。9ヵ所のお寺を巡るのが良いのだそうです。ビエンチャン市内ではメコン沿い、特にセタティラート沿いの お寺をつぎつぎと巡って行きます。
ワットミーサイ(境内に出された仏像に水掛け) | ワットミーサイ(境内に出された仏像に水掛け) |
ワットオントゥー(本堂の中の仏像に水掛け) | ワットオントゥー(本堂の中でお坊さんにマッケーン<糸結び>をしてもらいます) |
ワットインペン(境内の仏像に水掛け) | ワットインペン(境内の仏像に水掛け) |
ワットチャン(境内の仏像に水掛け) | ワットチャン(境内の仏像に水掛け) |
ワットハイソーク | ワットハイソーク |
ワットシームアン | ワットシームアン |
ワットシームアン | ワットシームアンの前の通りで水掛けに興じている若者たち |
ワットシームアンの前の通りで水掛けに興じている若者たち | ファーグム通りの水掛けに興じている若者たち |
ファーグム通りの水掛けに興じている若者たち |
第19回 サーラワン、セーコーン、アッタプー
3月6〜9日、南部のサーラワン、セーコーン、アッタプーへ行ってきました。
▲サーラワン市からサーラワン県北部のトゥムラーン郡へ行く国道23号の途中にあった簡易橋。 | ▲国道23号。トゥムラーン郡から更に北上してセーバンファイ川を渡るとサヴァンナケート県ピン郡に入る。 |
▲国道23号のセードン川に架かっ ていた橋の橋脚。サーラワン県サーラワン郡。ベトナム戦争時代、ホーチミンルートの1つとして使われていたため、アメリカ軍によって爆撃された。橋は今でも落とされたままになってい る。乾季のみ4輪駆動の車ならば通行できる。セードンは南に流れてパークセーでメコンに合流する。 |
▲トゥムラーン郡へ向かう途中の小学校の子どもたち。 | ▲トゥムラーン郡へ向かう途中に出会った親子。国道11号をセーコーンからアッタプーへ向かう途中でちょっと止まって撮影した風景。 |
▲セーコーン近くのコーヒー農家、収穫したコーヒー豆を家の前庭で乾燥。 | ▲ラオスのおばあちゃん。 |
▲ラオスの伝統楽器ケーン(笙)の練習。 |
▲アッタプー市を流れるセーコーン川に架かるセーコーン橋。ベトナムの援助で2001年12月工事開始、2003年12月完成。橋の長さは279m。アッタプーからベトナム国境までの国道18号線111kmは全面舗装されている。 |
▲セーコーン橋からセーコーン川の下流を望む。左側からセーカマン川が合流している。 | ▲セーコーン橋からセーコーン川の上流を望む。 |
▲アッタプーのセーコーン橋のふもとにある市場の風景。 |
▲アッタプー市を流れているセーコーン川のフェリー。 |
▲アッタプーとセーコーンの中間あたり、ボーラベン高原の約700mの標高差を利用したホアイホー発電所。 |
第20回 象と木材と道路の話
4月にサイニャブリー県パークライ郡とルアンパバーン県をまわった時、4月25日と27日の2日間で3頭の象に出会いました。象に出会うと同行しているラオス人のカウンターパートも「ソクディー(幸運だ)」と言います。理由を聞くと「象は長生きするから」だそうで す。今回は象と木材と道路について見聞きしたことをお話しします。
象の話
ラオス人の話では、サイニャブリー県で最も象の数が多いのはトンミサイ郡(何頭いるか正確な数を覚えていない)とのことでした。2番目は ホンサ郡(最近の発表で49頭)だそうです。象は「森の中で、切り出した丸太をトラックが入れるところまで運ぶ」ことに利用されています。象の値段は(一般に売り買いされているわけではないのできっちりとした相場があるわけではないのですが)日本円で100万円〜200万円ぐらいのようです。象の木材運搬の仕事は象の持ち主(象使い)と木材業者との間の取り決めで、出来高制で契約されます。運搬距離(およそ1km以内)によって契約額は違いますが、約 2000円〜8000円/?です。1日に象の持ち主が象を持ち込んで稼げる代金は約6000円〜8000円になります。
▲最初に見かけた象。パークライ郡からサイニャブリー市へ向かう国道4号線で。 | ▲2頭目の象。同じ国道4号線で。 |
▲3頭目の象。ルアンパバーンバ県ナムバック郡の1号線で。象に乗っているお兄さんに象の年を聞いたら、「ホクシッピーパイ(60才以上)」とのこと。 |
木材の話
地元の役人からは「木材の切り出しはサイニャブリー県では最盛期を過ぎた」と聞かされましたが、写真のように、国道4号線を車で進むと、たくさんの木材切り出しトラックに出会いました。
▲木材切り出しトラック。 |
多くの木材運搬船がフェリーに船着場に集結しています。これから雨季に入ると木材を切り出せなくなるので、木材の切り出しは最後の追い込みに入っています。パークライのゲストハウスもいつもはガラガラなのですが、今回は、木材業者で一杯で、なかなか空き室が見つかりませんでした。
▲パークライフェリー:木材集積。 |
道路の話
ビエンチャンからサイニャブリー県パークライ郡まではこれまで13号線を北へ向かい、ルアン パバーンの手前24kmのシェングンから国道4号線を南西にくだり、メコン川をフェリーで渡って、サイニャブリーを経由して更に南下して、合計約600km。 国道4号線の道路が悪いため、途中サイニャブリーサで1泊し、2日間の行程が普通でした。しかし、昨年ビエンチャン県サーナカーム郡からパークライ郡のメコン川の対岸までの道路が開通し(ADB資金)、フェリーが運航されるようになってからは、こちらのルートが利用されるようになりました。更に、ビエンチャンからメコン川沿いをサーナカーム郡に抜ける道路を現在建設中で、これが完成すれば、ビエンチャン県のヒンフープ郡とフアン郡を経由せず、サーナカーム郡への道が約150km短縮でき、 約200kmでビエンチャンとパークライをつなぐことが可能になります。これまでパークライ郡はタイとの経済活動が盛んでしたが、今後はビエンチャンとの 経済活動も活発になるのではないかと想像されます。
名前もわからない小さな川ですが、丸太橋が壊れ、川底まで急斜面で、道路もぬかるんでいたため、渡れず立ち往生。しかたなく、車はこの川沿いに河口に向かい、メコン川の河川敷きにいったん降りて、河口近辺の河川敷を回り込んで走って川を渡り、再度道路に戻って、なんとか進めました。ここを通過できないと、またビエンチャンまで150kmほど戻らなければならないところでしたので、ほっとしました。
▲ビエンチャン・サナカム道路。ナムヒー村近くの丸太橋。 |
▲ビエンチャン・サナカム道路工事。左側のメコン河は、写真上部が上流(パークライ方向)で、川は写真の上部から手前に向かって流れています。対岸はタイ。 | ▲右側のメコン河は写真左上部が下流(ビエンチャン方向)で、川は写真の右から左方向に向かって流れています。 |
▲ここで2時間通行止めに会いました。左側のメコン河がぎりぎりに迫っています。 |
第21回 ナムトゥン2ダム
ボリカムサイ県のナムトゥン2水力発電プロジェクトは、世銀やAFD(フランス)が絡んでいる壮大なプロジェクトで、2009年操業を目指して現在突貫工事中です。このプロジェクトの経済性は非常に高く評価されていますが、環境や水没地域の住民に対する補償など、問題も多くはらんでいます。プロジェクトの概要についてはウエブサイトで見てください。
ナムトゥン2ダムにはエンジニアとして興味深い点があります。一般の水力発電は、川の最下流部にダムを建設し、そこに発電所を設け、発電した水はそのままその川の下流に放流するのですが、ナムトゥン2ダムはちょっと違います。ナムトゥン川の下流部に水を堰き止めるためのダムを建設しますが、発電所は貯水池の南部の山をトンネルでぶち抜いたところに建設し、発電後の水はナムトゥン川やその支流のナムカディン川に放流するのではなく、南部のセーバンファイ川に転流するように計画されています。
発電後の調整ダムからセーバンファイ川までおよそ27kmあり、その莫大な量(220 立方メートル/秒)の水を流すための放流水路を現在建設中です。その調整ダムからセーバンファイ河口の合流点までの写真をいくつか紹介します。
▲建設中のナムトゥン2調整ダム。 | ▲ 同左 |
▲調整ダム直下流の放流水路の開始地点。 | ▲ 調整ダム直下流の放流水路の開始地点。水路の法面と水路底には付近の山で採れる石灰岩を敷き詰めています。 |
▲調整ダムから10kmほど下流地点の放水路(上流方向)。 | ▲調整ダムから10kmほど下流地点の放水路(下流方向)。 |
▲放水路とセーバンファイ川の合流点にある部落バーン・ナーキアオに行く途中にかかっている吊り橋。 | ▲放水路。 |
▲放水路とセーバンファイ川の合流点。 | ▲合流点近くで川に飛び込んで遊ぶ子どもたち。 |
第22回 ラオス初の鉄道
いよいよ「バンコク発ビエンチャン行き」の国際列車が走ることになりました。「一番列車は8月中に走る」と噂されていますが、8月の何日なのか、いまだに公表されていません。8月4日現在で「ターナーレーン駅」は仕上げ工事をやっているところで、完成間近でした。ある日本の旅行代理店の方は「日本の鉄道ファンに声をかけて、『バンコク・ビエンチャン国際列車一番乗り』のツアー を募ることもできるのだが、何日に走るのかがいまだにわからず、パッケージを組めない」とこぼしていました。
商売っ気がないというか、ラオスらしい、というか、この写真でも窺えるように、ずいぶんと静かな、田舎の雰囲気でした。「メコン友好橋」は橋長1,174m、1994年4月8日完成。オーストラリア からタイ・ラオスに「友好橋」として無償供与されました。建設当初から橋道の中央には鉄道が敷かれることを想定されており、タイ側(橋の中央まで)は鉄道が敷かれていましたが、ようやくラオス側にも延長され、ターナーレーン駅までの3.5kmの鉄道が敷かれました。この工事はタイの「無償+有償資金協力」で実現しました。
▲ターナーレーン駅(1) | ▲ ターナーレーン駅(2) |
▲ターナーレーン駅(3) | ▲ ターナーレーン駅(4) |
▲「メコン友好橋 (Friendship Bridge)」のメコン川中央地点。向こう側がタイ、手前がラオス。 | ▲「友好橋」上からラオス側を望む。 |
▲ラオスで最初の鉄道踏み切り。 | ▲踏み切りから「友好橋」方向を望む。 |
▲踏み切りから「ターナーレーン駅」方向を望む。約200m先がターナーレーン駅。 |
第23回 メコン河増水!危険水位突破! 2008年8月12日
今年は例年になく雨が多く、ナムグム・ダムの水位は7月22日に210mに達し、危険水位まであと2mと迫ったため、7月26日にこうずい洪水ばき吐ゲートを開き、放流を開始しました。
ナムグム・ダムは雨が少ない年はナムスワン川からの転流水で貯水池の水を補いながら発電するように計画されており、それでも水が不足して、洪水吐(こうずいばき)ゲートを開かない年もあります。雨が多い年でもゲートを開くのは雨季の終わり頃、ようやく貯水池が満タンとなって、9月になってからゲートを開くことが普通です。ところが、今年はずいぶん早くゲートを開くことになりました。珍しいことなので8月 8日にナムグムダムへ出かけて行き、こうずい洪水ばき吐ゲートからの放流を写真に収めました。ナムグムからの帰りにも、ナムグム下流の何ヵ所かで水位が上昇しているのを見てきました。
そうこうしているうち、本日(8月12日)日本大使館より「メコン河の水位上昇に伴う注意喚起」が出されました。メコン河の洪水危険水位 は12.50mですが、12日7時現在、12.79mとなり、14日の予測では13.63mに達するだろうとのことです。この水位になりますと、ビエンチャン市内の低い地域で浸水、冠水になります。
しかし、自然現象に対して、あまり油断したり、軽視することはいけませんが、写真にあるように、今日のお昼、ビエンチャンの人々が土嚢を築き始めた様子は、なんとなく「のんびり」している雰囲気です。大きな被害にならなければいいな、と願うばかりです。
▲ナムグム川下流バンクン村付近の水位上昇(1) | ▲ ナムグム川下流バンクン村付近の水位上昇(2) |
▲メコン河水位上昇(土手に作られた屋台は流されてしまった) | ▲メコン河水位上昇にともない、ビエンチャンの町の人々が協力して土嚢を築きだしている。 |
▲メコン河の水位上昇をビエンチャンの人たちが心配そうに見ている。 | ▲ ナムグム川下流タソモー村の土手の家の一階が浸水。 |
▲ナムグムダム洪水吐(こうずいばき)ゲートからの放流(1) | ▲ ナムグムダム洪水吐ゲートからの放流(2) |
第24回 ルアンナムター 2009年4月
ルアンナムター県に行ってきました。
▲@ ルアンナムター郊外の農家 | ▲A-1 農家のラオラオ(地酒)つくり | ▲A-2 農家のラオラオ(地酒)つくり |
▲B-1 中国国境ボーテーンのカジノホテル | ▲B-2 中国国境ボーテーンのカジノホテル | ▲B-3 中国国境ボーテーンのカジノホテル |
第25回 サイニャブリーからルアンパバーンへ 2009年11月
▲@-1 サイニャブリー県ケーンタオのタイ国境入管事務所 | ▲@-2 サイニャブリー県ケーンタオのタイ国境入管事務所 | |
▲A 国道13号、ビエンチャンより442kmの地点。ウドムサイまで135kmの道標 | ▲B-1 ルアンパバーン県郊外の協同脱穀作業 | ▲B-2 ルアンパバーン県郊外の協同脱穀作業 |
ラオス便りNo.1〜No.8 ラオス便りNo.9〜No.16
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