ガザの八百屋は今日もからっぽ――封鎖と戦火の日々

JVCブックレット002

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小林和香子著
定価840円+税
四六判変型・並製・130ページ
ISBN978-4-8396-0225-3 C0330

【関連書】NGOの選択 NGOの時代 NGOの挑戦(上)  難民キャンプのパントマイム
ネグロス・マイラブ 母なるメコン  イサーンの百姓たち すべてのいのちの輝きのために
学生のためのフィールドワーク入門

  【JVCブックレットとは】

 JVC=日本国際ボランティアセンター)と連携して作りはじめた新しいブックレットのシリーズです。
 ジャンル=国際関係、紛争、市民運動、NGO活動など。
 内容と書き手=マスメディアでは伝わってこない「現場の声」の声が基本です。書き手は現場で活動あるいは取材してきた人たちと研究者。
 体裁と価格=四六判変型(縦長)・並製・100〜150ページ。定価800円〜900円台。
 装丁=売り出し中の若手デザイナー水戸部功によるすっきりと読みやすいレイアウト。

2008年12月、パレスチナのガザ地区にイスラエル軍が侵攻し、子どもを含む多くの市民が犠牲になりました。国境を封鎖されて日常用品にも事欠く生活を強いられたガザの人たちはどんな思いで戦火の日々を過ごしたのでしょうか。彼らはなぜこのような理不尽な目にあわなければならないのでしょうか。40年に及ぶイスラエルの占領と度重なる軍事侵攻、封鎖を生き抜いてきたガザの人たちの心の叫びを聞いてください。

【著者はこんな人】

小林和香子(こばやし・わかこ)
慶応義塾大学文学部史学科東洋史専攻卒。早稲田大学大学院国際関係学博士課程在籍。駐日ノルウェー王国大使館、マッキャンエリクソン勤務などを経て、JVCエルサレム事務所勤務(2003〜04年)。国連大学本部勤務などを経て、JVCエルサレム事務所現地代表(2006〜09年3月)。


【目次】

はじめに
  第1章  ガザ軍事侵攻とその破壊の影響
   1 ガザ軍事侵攻――攻撃の最中で
   2 軍事侵攻の爪跡

第2章  ガザが歩んだ道
   1 文明の交差点
   2 ナクバ(大破局)へ
   3 軍事侵攻が始まった
   4 ハマス政権誕生と国際社会による制裁
   5 ハマスの治安拠点制圧とイスラエルによる燃料制裁
   6 「タハディーヤ」の中で

第3章  子どもたちにのしかかる現実
第4章  平和を求めて

あとがき


【まえがきより】

 2008年12月27日に、イスラエルによるガザへの大規模軍事侵攻が始まりました。空爆で燃える上がるガザ、増え続ける死傷者の数、病院に次々担ぎ込まれる負傷した子どもたち。学校が、病院が、国連施設や救急車も攻撃されました。窓ガラスが割れ、電気も水もパンも途絶える中、気がおかしくなりそうになりながら、人々は家族と共に生き延びることを祈ってきました。イスラエルによる軍事侵攻は自己防衛という理由があったとしても、その暴力は「度を越えた」ものであり、ガザの人々が被った犠牲は想像を絶し、修復の目途さえついていません。この惨事は私たちが記憶し、問い続けなければなければならないものだと考えます。
 しかしそれと同時に、この惨事が起きた背景を無視することはできません。ガザは地中海に面し、自然に恵まれた、ファラオの時代や旧約聖書の時代から重要な交易経由地でした。またその温暖な気候から柑橘類や麦などの産地として栄えた豊かな歴史と文化を有します。それが今では「巨大刑務所」と言われるように、人も物も金もすべての移動がイスラエルによって完全に管理され、人々は経済発展を拒まれ、国際人道支援なくして生きていけない状況に置かれ、あらゆる人権と人としての尊厳を剥奪された状況で生きることを強いられているのです。
 日本国際ボランティアセンター(JVC)は2003年からガザで子どもの栄養改善の事業を中心に活動を実施してきました。私は2003年からガザの活動に携わり、悲惨な状況の中でも前向きに懸命に生きようとしているガザの人々に出会ってきました。しかし残念ながら、それからガザの状況は悪化の一途をたどっています。イスラエルによって占領、封鎖され、民主的に選ばれた自治政府は国際社会から拒否され、いよいよ食料も燃料も底をつき、国連機関も人道食料支援物資の配給すらできなくなった状態で、今回の軍事侵攻は行なわれたのです。
 私がこの本を書いたのは、日本の人たちにガザの人々の生活を知ってもらいたいと思ったからです。40年にいたる占領と度重なる軍事侵攻、そして封鎖になんとか耐えて生き抜いてきたガザの人々にとって、今回の軍事侵攻は何を意味するのか。停戦後も復興どころか修復も全く進まない中、彼らはどのように生きているのか。彼らの将来への希望は完全に消えてしまったのか。そのような問いを一緒に考えてもらえたら、と思います。


【読みどころ】
 今もガザに入ってくるのは緊急支援だけよ。窓が割れた家は危険だわ。でもガラスも入ってこない。ここでは子どもたちに将来を与えてあげられない。境界は閉まったままで、どこにも行けない。夜は怖いわ、子どものことが心配になる。今でもゆっくり眠れない。昨日も夜中に突然子どもの名前を叫んで起きたの。突然意味もなく涙がこぼれることもあるわ。でも、私はガザから出ようとは思わない。ここには私の家族がいて、ここは私の土地で私の国なのよ。私は平和に暮らしたい。でも、ここに平和は存在しない。「平和」はビジネスになってしまったの。歪んでしまったの。期待はしないわ。23日の戦争の間、アラブ諸国もアメリカも私たちが殺されるのをただ見ていたわ。誰も行動を起こさなかった。

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