デイアスポラの民モン――時空を超える絆

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 吉川太惠子

 定価3500円+税
 A5判上製・346ページ
 ISBN978-4-8396-0270-3
 装丁:水戸部功


 【関連書】 ラオスは戦場だった  ラオス史  激動のラオス現代史を生きて――回想のわが生涯  ヴィエンチャン平野の暮らし  現代ラオスの政治と経済――1995~2006  ラオス概説  ラオス農山村地域研究


 「流浪の民」モン族をアメリカ・フランス・オーストラリアに追って6年。徹底した面接調査をもとに彼らの特性をまとめあげた文化人類学の力作です。
 モン族とは……ラオス・ベトナムの山岳地帯に住む少数民族です。ベトナム戦争ではアメリカCIAに軍事訓練を受けて「特殊部隊」として組織され、ベトナム解放民族戦線と闘わされました。ベトナム戦争終結後、国を追われて四散。現在はラオスに残ったモン以外に、約30万人がアメリカ・フランス・オーストラリアなどに住んでいます。クリント・イーストウッド主演の映画『グラン・トリノ』はアメリカに移住したモン族が主人公です。非常に勤勉で独立心が強く、伝統と習慣を強く守って、同族の絆を保持しつづける民族として、注目を集めています。



【目次】
序章 「ディアスポラ」の民‐モン族
 第1節 研究の背景
 第2節 問題提起
  2-1 Hmongnessと親族関係
  2-2 クランと親族関係を基盤にした社会
  2-3 「ディアスポラ」の民
  2-4 過去、現在、未来を結ぶ儀礼
 第3節 先行研究
  3-1 アイデンティティ/エスニシティ研究
  3-2 親族研究
  3-3 モン族研究
 第4節 分析概念
 第5節 研究の方法
  5-1 空間(スペース)の概念
  5-2 多現場民族誌(Multi-sited ethnography)
  5-3 フィールドワーク
 第6節 モン(Hmong)族の定義と表記方法
  6-1 モン族の定義
  6-2 表記方法

第1章 インドシナ戦争・ベトナム戦争
 第1節 フランスのインドシナ統治
 第2節 ラオス秘密戦争
 第3節 「モン掃討作戦」
 第4節 難民キャンプ
  4-1 難民キャンプの設立
  4-2 難民キャンプの生活
  4-3 新しいリーダーの出現
 第5節 終わらぬ逃避行
 まとめ

第2章 モン(Hmong)族
 第1節 モン族の起源と移動の歴史
  1-1 中国
  1-2 中国から東南アジアへ
 第2節 モン族の人口
 第3節 モン族社会
  3-1 個人より集団を優先する社会
  3-2 家父長社会
  3-3 “Xeem(セン)”(クラン)
  3-4 “cum(カム)/ib(イ) tug(ドゥ) dabqhuas(ダクゥア)” (サブ・クラン)
  3-5 親族関係
 まとめ

第3章 Hmongness (Hmoob(モング) kev(ゲ) shib(シ) hlub(フルー))
  第1節 Hmongness (“To be Hmong”)
  第2節 共有されるHmongness
  2-1 Paj(パ) Ntaub(ンダウ)/Flower(フラワー) cloth(クロス)とStory(ストーリー) cloth(クロス)
  2-2 銀細工
  2-3 ビデオ(DVD)
 第3節 「新年の祝い」(noj(ノ) peb(ペ) caug(ジョ))
  3-1 新年の祝い(ラオス)
  3-2 新年の祝い(アメリカ)   3-3 新年のの祝い(フランス)
  3-4 表面化するコミュニティの問題‐「新年の祝い」をめぐって
 まとめ

第4章 時空を超える絆
 第1節 モン族の宇宙観
 第2節 宗教的儀礼
 第3節 アニミズムとシャーマン
 第4節 「いのち」のサイクル
  4-1 魂を呼び込むフ・プリ
  4-2 葬儀(pam(パ) tuag(トゥア))
 第5節 結婚式 (noj(ノ) tshoob(ツー))
  5-1 結婚の概念
  5-2 結婚式の手順
 まとめ

第5章 アメリカ合衆国・フランス・オーストラリアのモン族
 第1節 アメリカ合衆国のモン族
  1-1 アメリカ合衆国の移民・難民政策
  1-2 アメリカのモン族社会
  1-3 モン系アメリカ人議員の誕生
  1-4 ミネソタ州・ウィスコンシン州(都市部のコミュニティ)
  1-5 フレスノ(農村地域のコミュニティ)
 第2節 フランスのモン族
  2-1 フランスの移民・難民政策
  2-2 フランスのモン族社会
  2-3 パリ近郊:グリニ/メシュールセンヌ(都市部のコミュニティ)
  2-4 オビニーシュールネール/ニーム(農村地域のコミュニティ)
 第3節 オーストラリアのモン族
  3-1 オーストラリアの移民・難民政策
  3-2 オーストラリアのモン族社会
  3-3 シドニー・メルボルン(都市部のコミュニティ)
  3-4 ブリスベン(農村地域のコミュニティ)
 第4節 モン族社会の比較考察
  4-1 言語環境
  4-2 呼称の使用状況
  4-3 儀礼
  4-4 男女の位置づけ
  4-5 政治に対する関心
  4-6 生活の満足度
 まとめ

第6章 モン族社会の現状と変化
 第1節 ジェンダー概念
  1-1 性差をめぐって
  1-2 成人男性が受けたカルチャー・ショック
 第2節 世代による価値観の変化
 第3節 宗教
 まとめ

第7章 環流するモンのアイデンティティ
 第1節 「祖国」への想い
 第2節 モン族の「想像のコミュニティ」
 第3節 元指導者、バン・パオの死を通じて
 まとめ

終章 結論と今後の課題
 第1節 問題の確認
 第2節 モン族のアイデンティティとその社会の特徴
 第3節 結論と今後の課題


あとがき
参照文献
図・表の目次
写真(Picture credit)・図の出典
インタビューリスト
参考資料1: 男性呼称(グリーン・モン)
参考資料2: 女性呼称( 同上 )
参考資料3: モン族の女性名と男性名


【著者はこんな人】
吉川太惠子(よしかわ・たえこ)
同志社大学大学院アメリカ研究科博士前期課程(アメリカ研究、修士号取得)
法政大学大学院国際文化研究科博士後期課程(国際文化 博士号取得)
現在、法政大学非常勤講師




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